事前に配られていたプロフィールには『卵アレルギーで、ベジタリアン』となっている。どんなものが食べれらるのかしら・・とレセプションのときにさりげなく観察してみると、アハナはフライドポテトと(卵が入っていない)クッキーしか食べていなかった!「シンガポール(日本に来る前に4日ほどホームステイをした)では、食べられるものがなかったから、友達も私もまる一日何も食べなかったの」なんて、けろっとして言う。
一般的に、向こうの子たちに人気があるのは、唐揚げ、照り焼き味のもの、マクドナルド、ピザ、パスタ類、手巻き寿司、アイスクリームなど、と聞かされている。日本の子どもと変わらないということかな。ただ、ここから卵製品と肉類を除くと、ちょっとレパートリーが苦しくなるし、むりに日本食は作らないほうが良いでしょうと言われていたのも気にかかる。野菜の煮物はベジタリアンの理にはかなうけれど、味としては不評らしい。
とりあえず、2日目の夕食は好きな食べ物のところに書いてあった、ピザにした。家で作れば、大丈夫だろうからと、生地だけ下準備しておいて一緒にトッピングを買いに行った。ピザの上にのせるものは何でも大丈夫って言いながら彼女が選んだのはパプリカ、オニオン、トマト、コーン、そしてなぜかパイナップル(!)。
「ピザはフミがうちに来たときに一緒に作った~」と嬉しそうにお手伝いをしてくれたので、その間に私はスープの準備をする。野菜スープなら問題ないかなと思ったが、念のためにスープの素を確かめさせたところ、やはり、ビーフやチキンのエキスの入ったものはだめだった。素材だけではなく、味付けにも気を遣わなくてはいけない。
3日目はパスタ。ベーコンを入れず、野菜のブイヨンを使ったラタトゥイユを作ってソースにしてみた。ナスは少し苦手だったようだ。
4日目はバイキングに出かけてみた。数ある料理も、改めてみてみると殆どが肉あるいは魚、そしてそのエキスを使った料理であることに気づく。私は植物性の油しか使わないけれど、海外では肉の脂(fat)を使って調理することも多いので、それゆえに食べられなかったものもあったとか。ベジタリアンになるのも大変である。この日、アハナが食べていたのは野菜のてんぷらと・・・おなじみフライドポテトにアイスクリーム。アイスクリームはお店の人に箱の表示を見せてもらい、安心したと同時にお店の裏側を見ちゃったような気がして申し訳なかったような。
4日間、食事のことがいつも気になった。もちろん、アレルギーやベジタリアンに気を遣っていたこともあるけれど、今振り返ってみると、それは食に重きを置く日本の文化に縛られていたからでもある。毎日ピザやパスタやフライドポテトでは炭水化物と脂肪の取りすぎではないかとか、ベジタリアンの本質からずれていないだろうかとか、心配し、お皿の数が少なくては手抜きと思われるかもと見栄を張る。食事を楽しむより、プレッシャーになっていた日々は、自分を見直すいい機会にもなった。アメリカにいた頃、クリスマスの食卓に招待され、どんなご馳走だろうと出かけてみたら、クラッカーとスープと楽しい会話が待っていた、あの驚きを思い出し、世界の食卓の中で日本の食卓はひとつの文化に過ぎないということに改めて気づいたのだ。日本の、栄養を考え、彩を考え、食感を考える献立はすばらしいと思うし、それを誇りにはしているけれど、自分が常にそうした自国の文化に染まって生きているということを自覚していないと他国とのカルチャーショックにストレスを感じることになるってことも。
事前説明会では、食事のことも含めてとにかく普段どおりの生活をし、日本を体験させてあげてくださいともいわれていた。思いきって、まずど~んと出してみてもよかったのかもしれない。けれど、3日目くらいから気づいたのは、アハナは、「食べられる」「好き」と言いながらもあえて食べようとしない、とても慎重で心配性の子だったということ。そういうところが心なしか自分に似ているような気もして、「食べてみたら?」って言えなくなってしまったのだ。私に料理の才があったら、アハナと一緒にゆっくり話しながら、彼女が好きな味に野菜を上手に調理して、日本のよさも取り入れた食卓を作れたんだろうけどなぁ。
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